背景
中古で買ったキャンピングトレーラーと始まったキャントレ・ライフ。のはずだったが。。納車後すぐに旅に出ようと準備に取り掛かったところで、灯火が何かおかしい。。(こんなのばかり)
という訳で今回は、必要に迫られて自分の知見を深めるため、この機会にトレーラの電気接続用コネクター(以降”コネクタ”)の規格を、日本で頻繁に遭遇しそうなものに限定して一から調べました。
どうせなら同じように困る人の役に立てばと思い、調べた内容をこの記事にまとめています。
日本では「JIS〇ピン」「US〇ピン」「EU◯ピン」といった呼び方が広く使われていますよね。現場では便利な略称ですが、必ずしも正式な規格を正確に示すものではなく、一意に特定できる呼称でもありません。
例えば、「7ピン」にも何種類もあり、背景にある規格が異なれば、ピン・タイプ(丸型/平型)、ピン・アサイン、回路なども一致しません。一方で、異なる規格なのに物理的に「差し込めてしまう」ケースも存在します。
この記事を執筆するにあたって、可能な限り規格仕様書の原文を参考にしました(SAE J2863についてはまだ仕様書を入手できていません。どなたかお持ちでしたらお問い合わせフォームからご連絡ください。)が、もし修正すべき点等ございましたらご指摘の程よろしくお願い申し上げます。
本記事は情報提供のみを目的としており、技術的助言または安全保証を行うものではありません。
規格情報や寸法情報は執筆時点の資料に基づいていますが、改訂や個体差、公差等により実際の製品仕様と異なる場合があります。
記載内容を利用した作業・接続・改造は、必ず自己責任にて実施してください。
本記事に起因または関連して発生した直接的・間接的損害について、筆者は一切の責任を負いません。
それではひとつひとつ見ていきましょう。
JIS7ピン
日本の規格である JIS D 6606 に基づく7極コネクタです。
I形とII形が規定されており、現在一般に「JIS7ピン」と呼ばれているのはII形を指す場合がほとんどです。
| 規格 | JIS D 6606(1973年制定) |
|---|---|
| 名称 | トラックトラクタ及びトレーラ用 7極電線カップリング |
| 電圧 | 明記無し。ジャンパーケーブルの耐電圧の規定では1000Vに1分間耐えること。 |
| 参考資料 | JISハンドブック – JIS HB 18-2 自動車 II |
配線 (I形・II形)
I形とII形で共通です。
| 端子番号 (色記号) | 電線の色別(ジャンパケーブルだけ) | 接続回路 |
|---|---|---|
| 1 (WHT) | 白 | 接地 (アース) |
| 2 (BLK) | 黒 | 駐車灯・作業灯 |
| 3 (YEL) | 黄 | 方向指示灯(左) 非常点滅表示灯(左) |
| 4 (RED) | 赤 | 制動灯(専用回路のとき) |
| 5 (GRN) | 緑 | 方向指示灯(右) 非常点滅表示灯(右) |
| 6 (BRN) | 茶 | 尾灯・番号灯・車幅灯・路肩灯 |
| 7 (BLU) | 青 | 後退灯 |
I形
形状
II形と比べて大型です。

補足
自衛隊の小型トラックやトレーラなどにも採用されています。
規定されているのはジャンパーケーブルだけで、トラクタおよびトレーラ側の配線には自由度があります。必ずテスターで確認しましょう。
II形
形状
I形と比べて小型です。

補足
JIS D 6606 – 1994(HTML版)
JIS D 6606 Ⅱ型は、US7ピン(SAE J560)とISO 1185と機械寸法はほぼ共通で、相互に嵌合可能な場合がありますが、用途や使用電圧、回路仕様は異なります。
形状互換?
1975年8月発行の「標準化ジャーナル」に気になるレポートがあったので触れておきます。昭和50年4月17日に日本規格協議会で開かれた「第111回ISO部会の報告」という内容で、日本国内のISO対応組織における国内審議会合の報告です。
1975年当時、ISOは旧制度(ISO/R)から正式なInternational Standardへ移行する過程にあり、ISO/R1185はDIS1185として改訂され、寸法体系も従来のSAE基準(インチ)からDIN基準(ミリ)へ整理されました。
以下の報告内容から、日本はこのドラフト(草案)に賛成票を入れることが伺えます。その際の論点として「このDraftに該当するものとしてJIS D 6606(トラックトラクタ及びトレーラ用7極電線カップリング)があり、~~実質的には現行JISの寸法でカバーできる範囲であり」としています。これをJIS D 6606 Ⅱ型とISO 1185のコネクタの形状互換を保つことを暗に意図したたと考えるのは深読みしすぎかもしれませんが。。それに、コネクタを抜き差しができたとしても接続回路が違うので、コネクタの形状互換性を実装しても誰得だろうか。。
TC 22 DIS 1185 Road vehicles-Electrical connections between towing vehicles and trailers with 24 V electrical equipment-Type 24N(Normal) (Revision of ISO/R 1185-1970) これは、R1185を改正してISO1185に切換えるもので、24Vの電気装備を持つ牽引トラックとトレーラ間の電気的連結に監視、これらに互換性を持たせるよう、接点の数、配列、各部寸法、配線の色分け、マーク等について規定している。このDraftに該当するものとしてJIS D 6606(トラックトラクタ及びトレーラ用7極電線カップリング)があり、従来のR1185及びJISは、SAEの寸法に依っているため細部の寸法に端数が多く付けているが、このDISはDINの寸法を採用しているため寸法数字の末尾が丸めてある。しかし、実質的には現行JISの寸法でカバーできる範囲であり賛成として回答することとした。
1975年8月発行 標準化ジャーナル
US7ピン
北米で使用される7極コネクタの総称で、日本では通称「US7ピン」と呼ばれています。
規格体系はSAEに基づきます。
主に大型商用車向けのSAE J560と、RV用途で普及している丸形でブレードタイプの端子を持つSAE J2863が存在します。
同じ「7ピン」でも形状や用途が異なる複数の規格が含まれるため、“US7ピン=一種類”ではない点に注意が必要です。
広く普及しているコネクタですが、日本の保安基準に照らし合わせてみると、7-Way Round(SAE J560)は後退灯回路がない、7-Way RV Blade はウインカーとブレーキが共用、になっているため、そのままでは使えません。日本の保安基準に適合させるために回路分離や追加端子化が行われる事例があります。
7-Way Round (SAE J560)
SAE J560は北米の大型トラック向けに発展した規格で、方向指示灯と制動灯が独立している点が特徴です。ただし、標準的な当該7極仕様には後退灯回路が含まれません。そのため、日本で使用する場合は後退灯用の回路を別途確保する必要があります。
JIS7ピン、ISO 1185と機械寸法はほぼ共通で、相互に嵌合可能な場合がありますが、用途や使用電圧、回路仕様は異なります。
補助装置(例:テールゲートリフター、冷凍機用電源装置、室内灯など)の回路のための補助コネクタと合わせて使用されることがあります。
| 規格 | SAE J560 (1951年制定) |
|---|---|
| 名称 | Primary and Auxiliary Seven Conductor Electrical Connector for Truck-Trailer Jumper Cable |
| 電圧 | 12V |
| 参考資料 | SAE Standard |
形状
オプショナルで溝が付くことがあることが仕様書で示されていますが、本記事では割愛しました。

配線
端子番号2の識別灯回路は、北米法規に基づく大型車両用識別灯への給電を目的としたもので、地域の法規がコネクタ仕様に組み込まれた好例といえます。
| 端子番号 (色記号) | 電線の色別 | 接続回路 |
|---|---|---|
| 1 (WHT) | 白 | 接地 (アース) |
| 2 (BLK) | 黒 | 車幅灯・側方灯・識別灯 |
| 3 (YEL) | 黄 | 方向指示灯(左) 非常点滅表示灯(左) |
| 4 (RED) | 赤 | 制動灯およびアンチロック・ブレーキ・システム(ABS)(補助電源) |
| 5 (GRN) | 緑 | 方向指示灯(右) 非常点滅表示灯(右) |
| 6 (BRN) | 茶 | 尾灯・番号灯・車幅灯および/または側方灯 |
| 7 (BLU) | 青 | ABS用の常時電源(主電源)/補助機器用電源 |
補足
エーリッヒ・イェーガーの製品紹介動画です。
7-Way RV Blade – Traditional / SAE J2863
北米RV用途で広く使われている7極ブレード型コネクタは、長年の慣習仕様を基に普及してきました。現在はSAE J2863によってインターフェースと性能要件が体系的に定義されています。
SAE J2863 は、従来(Traditional)の慣習配線をそのまま追認したものではなく、SAE の技術標準として整合を取り、機能や配列を明確に定義した規格です。そのため、従来(Traditional)配線とは配線色の割り当てが異なる場合があります。このような配線色の違いは、”7極ブレード型コネクタの注意点”として広く言及されています。
ウインカーとブレーキが共用、になっているため、そのままでは使えません。日本の保安基準に適合させるために回路分離や追加端子化が行われる事例があります。
現状、従来型(Traditional)と呼ばれる慣習的な色コードと、SAE J2863 に基づく色コードの両方が存在しています。作業にあたっては「規格がどうなっているか」よりも、テスターを使いピン機能を確認することが重要です。
| 規格 | SAE J2863 |
|---|---|
| 名称 | 7-Way RV Blade Traditional 7-Way RV Blade SAE J2863 |
| 電圧 | 12V |
| 参考資料 | Mechanical Elements – The “RV Standard” For Trailer Wire Colors |
形状

配線
色別が異なります。
| 端子番号 | 電線の色別 | 接続回路 | |
|---|---|---|---|
| Traditional | SAE | ||
| 1 | 白 | 白 | 接地(アース) |
| 2 | 緑 | 茶 | 尾灯/車幅灯(Running lights) |
| 3 | 赤 | 黄 | 左ウインカー兼ブレーキ |
| 4 | 茶 | 緑 | 右ウインカー兼ブレーキ |
| 5 | 青 | 青 | 電動ブレーキ制御 |
| 6 | 黒 | 赤(or黒) | バッテリ正極電源(常時+12V) |
| 7 | 黄 | 紫(or灰) | 後退灯 |
EU7ピン
欧州規格に基づく7極コネクタで、主に乗用車および小型トレーラ用途の12V灯火回路に使用されます。
ISO 1724
EU7ピンの代表規格ISO 1724(12N)です。欧州域内で広く標準化されており、灯火回路専用のシンプルな構成です。
補助回路が必要な場合には、ISO 3732(12S)と組み合わせて使用されます。
現在も広く使用されていますが、新規開発や追加機能が必要な場合にはISO 1146(EU13ピン)が代替として用いられることが規格本文で示されています。
| 規格 | ISO 1724 (1975年制定) |
|---|---|
| 名称 | Connectors for the electrical connection of towing and towed vehicles — 7-pole connector type 12 N (normal) for vehicles with 12 V nominal supply voltage |
| 電圧 | 12V |
| 参考資料 | ISO-1724-2003 |
形状

配線
| 端子番号 | 電線の色別 | 接続回路 |
|---|---|---|
| 1 | 黄 | 方向指示灯(左) |
| 2 | 青 | 後部霧灯(リアフォグランプ) |
| 3 | 白 | 共通リターン(アース) |
| 4 | 緑 | 方向指示灯(右) |
| 5 | 茶 | 右側後部車幅灯 右側外側端標灯 後部ナンバープレート照明灯(*a) |
| 6 | 赤 | 制動灯 |
| 7 | 黒 | 左側後部車幅灯 左側外側端標灯 後部ナンバープレート照明灯(*a) |
EU13ピン
ISO 11446に基づく13極コネクタです。
主に12V系の乗用車・キャンピングトレーラ用途で使用されます。
現在の欧州新車では、13ピン仕様が主流です。
ISO 11446
灯火回路に加え、常時電源・充電回路・バックランプなどを備えた仕様で、EU7ピン(ISO 1724)の発展形として位置付けられます。ツイスト・ロックと呼ばれるねじ込み式ロック機構とシーリング・リングを採用しています。
規格仕様書はPart 1とPart 2に分かれ、Part 1は通常用途向けの13ピン基本仕様。Part 2は渡河を想定する車両向けで、追加の浸水試験要件が規定されています。寸法やピン配列は共通で、違いは用途と試験内容(Part2の「水深300mmに20分間漬けて水の侵入が無いこと」など)にあります。
| 規格 | ISO 11446(1995年制定) ※2012年の改訂でPart 1とPart 2に分割された。 |
|---|---|
| 名称 | Road vehicles — Connectors for the electrical connection of towing and towed vehicles けん引車および被けん引車の電気接続用コネクタ— Part 1. 13-pole connectors for vehicles with 12 V nominal supply voltage not intended to cross water fords パート1:水路を横断することを意図していない公称供給電圧12Vの車両用の13極コネクタ Part 2. 13-pole connectors for vehicles with 12 V nominal supply voltage intended to cross water fords パート2:水路を横断することを目的とした公称供給電圧12Vの車両用の13極コネクタ |
| 電圧 | 12V |
| 参考資料 | ISO-11446-1-2012 ISO-11446-2-2012 |
形状

配線
| 端子番号 | 電線の色別 | 接続回路 |
|---|---|---|
| 1 | 黄 | 方向指示灯(左) |
| 2 | 青 | 後部霧灯(リアフォグランプ) |
| 3 (*1) | 白 | 端子番号1~8番用の共通リターン(アース) |
| 4 | 緑 | 方向指示灯(右) |
| 5 | 茶 | 右側後部車幅灯 右側外側端標灯 後部ナンバープレート照明灯(*2) |
| 6 | 赤 | 制動灯 |
| 7 | 黒 | 左側後部車幅灯 左側外側端標灯 後部ナンバープレート照明灯(*2) |
| 8 | 桃 | 後退灯 |
| 9 | 橙 | 常時電源 |
| 10 | 灰 | イグニッションスイッチ連動電源 |
| 11 (*1) | 白/黒 | 10番端子用共通リターン回路(アース) |
| 12 | – | 未使用(*3) |
| 13 (*1) | 赤/白 | 9番端子用共通リターン回路(アース) |
(*2) ナンバー灯は尾灯と同時点灯しますが、右側(Pin5)や左側(Pin7)の回路に直接共用してはならないと規定されています。これは左右独立回路の診断機能を保つためです。
(*3) ISO 11446の2002年版では、ピン12はトレーラー検知用として使用されていましたが、2004年版でこの機能は廃止され、現在は予備端子となっています。
その他
ISO 1185
ISO 1185(24N)は24V・7極の灯火用の規格です。補助回路が必要な場合には、ISO 3731(24S)と組み合わせて使用されます。
欧州大型商用車で現在も広く使用されていますが、新規開発や追加機能が必要な場合にはISO 12098(15極)が代替として用いられることが規格本文で示されています。
| 規格 | ISO 1185 (1970年制定) |
|---|---|
| 名称 | Connectors for the electrical connection of towing and towed vehicles — 7-pole connector type 24 N(normal) for vehicles with 24 V nominal supply voltage |
| 電圧 | 24V |
形状
JIS D 6606 Ⅱ型とSAE J560と機械寸法はほぼ共通で、相互に嵌合可能な場合がありますが、用途や使用電圧、回路仕様は異なります。

配線
| 端子番号 | 色別 | 接続回路 |
|---|---|---|
| 1 | 白 | 共通リターン |
| 2 | 黒 | 左側後部車幅灯 左側外側端標灯 後部ナンバープレート照明灯(*a) |
| 3 | 黄 | 方向指示灯(左) |
| 4 | 赤 | 制動灯 |
| 5 | 緑 | 方向指示灯(右) |
| 6 | 茶 | 右側後部車幅灯 右側外側端標灯 後部ナンバープレート照明灯(*a) |
| 7 | 青 | トレーラ制動制御回路 |
補足
エーリッヒ・イェーガーの製品紹介動画です。
おわりに
トレーラ用コネクタは、北米やヨーロッパなど各地域の法規や保安基準・産業構造・使用文化の中で、それぞれ独自に発展してきました。
その後、JIS(日本産業規格)やISO(国際標準化機構)、SAE(自動車技術者協会)などによって規格化が進みましたが、既存の慣習を刷新したというよりも、過去の配線方式や市場実態との整合を図りながら整理された経緯があります。
そのため現在の規格は、現代の理論的な最適解というよりも、歴史的経緯・互換性・市場規模など複数要因の折衷案として成立した側面があります。結果として、”従来方式や既存規格に似ているが完全には同一ではない”新しいパターンが生まれ併存する状況になっています。ユーザ視点では「全部同じにしてくれ」が本音ですが。。
特に日本では輸入キャンピングトレーラーの比率が高く、車両とトレーラーの出自が異なるケースも珍しくないのではないでしょうか。我が家も、アメリカ製車両でフランス製キャンピングトレーラーを牽引して日本で走らせています。
このような環境では、「規格上はどうなっているか」以上に実際にどのピンがどの回路として使われているのかをテスターで確認することが重要です。規格を知ることは前提ですが、最終的に安全を担保するのは現車確認です。
現状、キャンピングトレーラー配線は国際結婚みたいなもの。文化の違いを理解して、うまく付き合っていくしかなさそうです。どちらも対応を誤ると燃えることがあります。細心の注意を払いましょう。。

